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2023年度サポーター交流会を開催(一部訂正しました)

2023年度サポーター交流会を開催(一部訂正しました)

2024/02/05

にっぽん子ども・子育て応援団では、2023年度サポーター交流会を、2024年1月11日(火)16:30〜18:00、オンラインで開催しました。
子どもと子育て家庭に優しく、子育てしやすい社会の実現に向けた活動の裾野を広げ、支えていただいた自治体首長及び企業・団体サポーター制度を2023年度で終了することとなり、今回が最後のサポーター交流会開催となります。

にっぽん子ども・子育て応援団団長の勝間和代の開会挨拶ののち、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課育児・介護休業担当係長の竹島理紗さんから、令和3年の育児・介護休業法改正の内容について、レクチャーをいただき、続いて応援団企画委員で株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵が「誰が休んでも回る職場をどう作る?」と題し、男性育休の必要性と誰が休んでも回る職場の作り方について、基調講演を行いました。その後、ご参加いただいた方々と応援団団長と企画委員も交えての交流タイムとなりました。

開会挨拶
にっぽん子ども・子育て応援団団長 勝間和代

団長の勝間和代による開会挨拶は、サポーターのみなさまへの感謝から始まりました。そして、応援団が活動してきた15年の間に、子どもと子育てをめぐる課題が山積していることが、政府、自治体、企業をはじめ社会全体で共有されるようになってきたことを実感、課題解決に向けて動き出す自治体や企業も増えてきたと振り返りました。さらに、子ども・子育て応援を推進する各企業や自治体の素晴らしいところは、そこで働く従業員や住民の皆さんが、素晴らしい、楽しい暮らしをしていくために必要なことを進めようという哲学を持って、活動をしていることだと指摘、このイメージが広がって、働きたい企業や暮らしたい自治体選びの指標となることを願い、それらノウハウを広げられるよう発信していきたいと述べました。

行政レクチャー
「令和3年の育児・介護休業法改正について」
厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課育児・介護休業担当係長 竹島理紗さん

仕事と育児・介護の両立にかかる現状についての調査結果をもとに、令和3年の法改正において、新しい制度である「産後パパ育休」が創設されるに至ったという経緯の紹介から、レクチャーが始まりました。

第一子誕生前後で仕事を続けている女性の割合が4割前後から7割近くに上昇したものの、妊娠・出産を機に退職した理由のトップは依然として「仕事と育児・介護の両立の難しさ」で、女性の継続就業・出産と男性の家事・育児時間の国際比較でも、日本男性の家事・育児時間は低い水準にとどまる中、全体では男性の家事・育児時間が長いほど、女性の就業継続率、第二子以降の出生率とも高くなっていることが示されています。
日本での育児休業取得率は男性17.13%、女性80.5%と、さまざまな制度改正を経ても女性と男性には大きな隔たりがあり、育児休業取得を希望する男性が一定数いるにも関わらず、収入減少などの理由により、取得しなかったというデータもあります。さらに、男性の育児休業取得希望時期に関するデータから、出産直後の妻が心身の回復が必要な時期に共にいたい、育児に最初から関わりたいというニーズが高いことが窺われ、育児のスタート時期でもある出生時期に、より柔軟で取得しやすい枠組みを設けることで、男性の育児休業取得を促進することが重要との認識があったそうです。

令和3年の法改正により、雇用環境整備と個別の周知と意向確認が令和4年4月1日に施行されました。これにより、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に、どのような制度があるのか、職場の雰囲気によって申し出をしづらい、言いにくいということのないように、事業主として個別に労働者に向けて周知、意向確認をすることが義務付けられました。周知事項は育児休業・産後パパ育休の制度、申し出先、育児休業給付、社会保険料負担の取り扱いの4点になっており、事業主はこの4点全てについて周知する必要があり、取得を控えさせるような形での周知・意向確認は法に沿った措置の実施とは認められません。その実現のためには、社内での意識の徹底がなされていることが必要です。取得しやすい雇用環境整備については、相談窓口を設けること、研修の実施、先行事例の提供などのうち一つ以上の措置を講じることが求められており、なるべく複数の措置を講じることが望ましいとしています。また、育児休業の取得に関して、希望する時期、期間に取得できるよう配慮することが事業主には求められます。この二つの義務化によって、男性が育児休業を取得しなかった理由として割合の高い「職場の雰囲気」や「理解」を改善しようということで法改正が行われており、形式的ではなくより実効性のある取り組みが求められます。
雇用環境整備と個別の周知と意向確認に活用できる素材を厚生労働省のホームページで公開しており、参考にしてほしいとのことでした。

続いて、こちらも令和4年4月1日から施行されている有期雇用労働者の要件緩和について、法改正以前には「引き続き雇用された期間が1年以上」、「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかではないこと」という二つの要件が定められていましたが、法改正では、このうち一つ目が廃止され、契約更新の見込みがあれば、雇用間もない労働者でも育児休業を取得できることになりました。

次に、令和4年10月1日に施行された「産後パパ育休」は、女性には産後休業があるため、主に男性が対象となっています。子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能となっていて、申し出期限は出産の2週間前まで、初めに申し出れば2回に分けて取得が可能で、子が1歳になるまでに2回に分けて分割取得が可能となりました。さらに、育児休業中に仕事に空きが出てしまうのではないかと育児休業の取得を諦める、控える男性が多いことから、「産後パパ育休」中には、労使協定で合意している範囲で就業可能としています。休業中の就業については、「産後パパ育休」のみが対象で、1歳までの休業では、これまで同様に原則として就業できないことになっています。
育児休業取得はそもそも労働者の権利であって、その期間中は労務協定義務を消滅させる制度となっており、育児休業中は就業しないことが原則になっています。従って、「産後パパ育休」中の就労については、事業主から労働者に就労可能日を一方的に求めることや労働者の意に反する取り扱いがなされてはなりません。休業中の就業の仕組みについて知らせるときには、育児休業給付や育児休業期間中の社会保険料の免除について、休業中の就業日数によっては要件を満たさないことなどについても合わせて伝えることが必要です。
この改正で、より柔軟に育児休業を取得できることになり、特に男性は子どもが1歳になるまでに最大4回、育児休業を分割して取得できるところが特徴になっています。
これまでいわゆる「取るだけ育休」と言われたような数日間の育休だけでなく、できるだけ男性が育児に向き合うようになることを期待しているそうです。

令和5年4月1日から施行された育児休業取得率の公表は従業員が1000人を超える企業が対象で、男性の育児休業などの取得率、もしくは男性の育児休業取得と育児を目的とする休業の取得率のいずれかを、インターネットなど一般の人が閲覧できる方法で公表することが義務付けられています。公表は年1回、事業年度終了後速やかに概ね3か月以内に公表することとなっています。公表前事業年度とは、公表する事業年度の直前の事業年度とされており、3月末決算の企業であれば、4月から翌年3月までの事業年度ということで計算を行ないます。9月末決算の企業であれば10月から翌年の9月までの事業年度となります。また、育児休業等については、1歳までの育児休業と「産後パパ育休」を含めた形で計算することになります。公表の方法については、基本的にはインターネットでの公表(自社のHPか厚生労働省のHPにある「両立支援のひろば」)が想定されています。「両立支援のひろば」は次世代育成支援計画促進法により、一般事業主行動計画の公表のために作成したサイトで、現在、約12万社の企業が登録しており、こちらのサイトで育児介護休業法に基づく育児休業取得のみを公表することも可能です。閲覧する側から考えれば同一サイトで複数の企業データが閲覧できるというのは利便性が高く、法改正によって公表を義務付けた趣旨にも沿うので、厚生労働省としては、「両立支援のひろば」での公表を推奨しているそうです。

基調講演
「誰が休んでも回る職場をどうつくる?」
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長
にっぽん子ども・子育て応援団企画委員 小室淑恵

基調講演では、前半は最新の男性育休や働き方改革についての情報提供、後半は誰が休んでも回る職場をどうつくっていくかについてお話しさせていただきました。

株式会社ワーク・ライフバランスが取り組んでいることの一つが企業トップによる「男性育休100%宣言」で、現在175社になりました。きっかけは、5年前に名古屋で株式会社アイシン(当時はアイシン精機株式会社)の当時の社長、伊勢清貴さんと小室の対談でした。「孫が可愛いと言うと、子育てに参加してこなかったから、幼子と触れ合うのが新鮮に感じられるのだと、妻と喧嘩になる」と伊勢さん。我が子にもこんなに可愛い時期があったのに、仕事に邁進していて気づけなかったと強く反省し、「自社の社員たちには同じ思いをさせたくないから、僕は、男性はみんな育休をとったらいいと思っている」とおっしゃったのです。同席していた人事部長がこれを聞いて、現場では、男性に育休なんて取らせたら社長にお子られると思って、ずっと阻止してきたのに、「いつの間に考えを変えたのですか?」と椅子から転げ落ちんばかりに驚いたそう。この様子がとても印象的でした。
トップは年齢を重ねるに従って考えを変えていくのに、それに現場が気付かないで、勝手に男性育休取得を阻止していることもある。トップが「私は趣旨替えをした」ことをはっきり発表していただいて、間の人が阻止してしまうことのないようにしないといけない。トップがこれだけ変わってきた、経済界も(男性育休取得促進に)反対していないことに政府が気づけば、男性育休取得促進に向けて何もやらない理由はなくなる。ということで、小室は、一社一社地道に産後うつなどの話をご紹介して、企業トップによる「男性育休100%宣言」を積み上げていきました。こうしたことが男性育休に向けた法改正への大きな力となって、経済界も一緒になって成し遂げることができた背景もあることをぜひ、みなさんにも知っていただきたい。

経営者の方たちを説得した際に、一番納得していただけたのが、産後女性の死因の一位が自殺であり、その大きな原因は産後うつであるということ。産後うつのピークは産後2週間から1か月半あたりであり、その1番の原因はホルモンバランスの急激な変化で、それを回復させるにはまとまった睡眠と、朝散歩ができてセロトニンを増やすことができるといったことが非常に重要。この産後うつの症状がいわゆる児童虐待、赤ちゃんが可愛いと思えない、自分はダメな母親だと思う、夫を激しく攻撃してしまうということに関わっていく。この知識をいろいろな方たちにお伝えをしながら、取り組みを進めてきたそうです。
7時間睡眠は、女性が一人で夜中の授乳をする状況では実現できないので、いかにして夜中の育児を二人で交代しながらできるかにかかってきますが、明日仕事があるのでは育児に参画できません。男性の育休取得には妻と子ども、二人の命を救う大きな価値があると説いたのです。これまで男性育休取得は夫と妻のパワーバランスの問題と見られていましたが、妻子の命を救う大切な問題ということで、男性育休の重みがぐんと変わったかなと小室。
今回の育児・介護休業法改正の途中で新型コロナウイルス感染症の拡大があり、審議が止まってしまった時期もありましたが、家族を大切にすることの価値が高まって、男性育休のニーズが高まっていることがわかり、議論が再開、法改正に向かうことが出来ました。
また、この国の深刻な問題である少子化に関しても、男性育休が大きな鍵であることがわかっているそう。男性が育休を取得すれば家事・育児時間が15分伸びるというカナダのデータがあるほか、家事・育児時間が長い家庭ほど第二子以降が生まれているというデータもあります。男性育休取得により男性の家事・育児時間が増え、第二子以降の出生数が増え、少子化解決の大きな鍵になる。
2023年、厚生労働省の雇用均等基本調査に関する記者会見で発表された数値によると、男性の育児休業取得率が17.13%まで上がってきました。意外と低いなと思われるかもしれませんが、これは2020年から2021年の法改正前の数字です。今ではもっと進んでおり、従業員1000人以上の企業の男性育休取得率は、現在43%になっています。さらに、育休等取得率の公表による効果・変化に関するデータで、1割近くの企業が新卒・中途採用応募人材の獲得に効果があったと答えています。もちろん職場の状態が良くなる(社内の男性育休取得率の増加や職場内の雰囲気のポジティブ化)という効果も大きかったですが、今最も求められているのは人材獲得で、中小企業ほど人材獲得が求められており、中小企業だからこそ男性育休への取り組みに力を入れていくべきなのではないか、実際に企業に資金面の負担もほぼほぼないところもメリットです。

こういうことが起きると知っておくことは大切だと思うので、と前置きし、小室は次に男性育休に関してさらに検討が進んでいる内容を話し始めました。
育児休業給付金(現在手取りの80%)が、2025年には育児休業を2週間以上取得する場合に「手取りの100%」が給付される方向へ検討が進んでいます。最大28日間分が100%支給されるのであれば、取得しなかった理由の第一位である収入減が解消されます。男性育休取得が基本的に28日間となれば、飛躍的に取得率があがるでしょう。今から男性が数カ月単位で休んでも仕事が回る職場に向けた取り組みが求められます。
さらに、男性育児休業取得率の公表は、現在従業員1000人以上の企業に対してですが、300人以上企業に引き上げの見込みです。2025年に公表ということは、2024年の数字を公表することになるので、今からの取り組みが必要になります。
取得率もさることながら、取得日数にも注目が集まっています。取得率100%でも取得日数が2日では評価を下げる原因にしかなりません。厚生労働省の調査結果によると、職場全体で働き方改革をしている職場は、していないあるいは一部のみという職場に比べると、取得日数は約2倍だったそう。上司や同僚が休めていない職場で休むことは本人にとっては肩身が狭いと指摘、保護するだけでなく、周り全体が労働時間、働き方を変えていくことが必要で、上司や同僚も含めて、きちんと休みが取れている、適切な労働時間への改善が実現できると、育休取得日数が伸びていくのです。

他国の少子化対策を調べて、日本との相違点をまとめた表を示しました。
他国の少子化対策、大前提になるのは保育所の開所時間で、いずれもほぼ18時までなのに、日本だけが22時まで開所です。どの国でも女性の労働参画率を高めることに取り組んでいて、同時に男性の家事・育児参画も進めなくては実現できないので、労働時間改善とセットで行われています。かつては片働きで、長時間労働、男性は家事・育児に参画できませんでしたが、今のヨーロッパは国をあげて強力な労働時間改善を行い、男性を家庭に戻し、育児を複数の手でできるようにしました。例えば、フランスでは週35時間労働です。労働時間改善で、夫は家事・育児に時間を費やしてもキャリアが目減りすることがありません。妻も、復帰して働こうという意欲が湧きます。収入も2本柱になって支え合える安心感があります。家庭でも、男性も参画できると、複数で家事・育児ができるので楽しい。複数育児体制にしたことで第二子、第三子へとイメージも広がります。海外の視察に行くとき、つい子育て支援策のみを見てしまいますが、子育て支援策と労働時間が両輪になっていることが重要なポイントのようです。強力な労働時間改善により複数で育児ができるようにしたことが、少子化対策として秀逸だったのではないでしょうか。
一方の日本は、企業に過度に忖度した結果、労働時間は改善せず、22時まで保育を行うことによって、女性も長時間労働ができると言って職場復帰させましたが、その結果、男女両方が辛い社会になってしまいました。先陣切って労働参画した女性は長時間労働を引き換えに結婚や出産を諦めました。男性は長時間労働で体力と精神を消耗し、深夜に帰宅し、多少育児に参加するものの妻は満足せず、家庭で孤立する。妻は第一子の育児で疲弊し、夫への不信感が募って修復不可能になり、第二子以降は産み控える。どんなに意欲高く働いても、長時間労働ができない見劣りする人材として評価されず活躍できずというのは、女性だけじゃなく、男性も辛い。働けど働けど、賃金は上がっていかない。日本だけが貧しくなっていく状態というのは、実はこんなところからできてきたのではないでしょうか。企業の強力な労働時間改善が実現できるかどうかが重要だと小室は指摘します。
残業時間の国際比較でも、日本は特異な状況です。1週間あたりの残業の上限については、日本は上限なしですが、他国は設定があります。残業代も、日本は1.2倍ですが、他国は1.5倍で、休日出勤に至っては、他国は2倍に跳ね上がりますが、日本は1.3倍。賃金から見ても、日本は残業も休日出勤もさせやすい。勤務間インターバルも、EUでは義務化されていますが日本では努力義務にすぎません。日本人は働くのが好きとか、長時間労働が好き、文化だと言われていますが、法律がそのような状況を放置してきたというところも見ておかないといけません。
ハーバード大のメアリー・ブリントンさんは、「日本を50年研究してきて、少子化の原因は間違いなく労働ファーストだからですよ」そうはっきりと、きっぱりおっしゃっています。

では、どのように対処していけば良いのでしょうか。「誰が休んでも回る職場づくり」が鍵であることは、2022年度のサポーター交流会でも小室が指摘したところです。ここからは、「誰が休んでも回る職場を作る」具体的な方法について。

すでに、職を求める若い人にとって、男性育休取得は注目ポイントになっています。IT企業の求人情報が、すでに「男性の育休取得実績ありの転職・求人情報」に変わってきていて、「男性の育休取得実績あり」のタグができています。さらに、従業員80名くらいの委託元常駐スタイルの企業でさえ、常駐社員が育児休業取得を希望すれば、代わりの人材を確保して、育休取得できるよう計らう。これまでなら理由を並べ立てて取得を阻んできた企業も、ここまで変わっています。
そう前置きして、どういうふうに働き方を見直せば良いのか、小室はその具体例を示していきました。

現在の働き方を徹底的に確認すること。男性育休支援というと、その個人にピンポイントで支援しようとしますが、職場全体を変えていくことが重要です。これをワーク・ファミリー・バランスではなくワーク・ライフ・バランスといいます。ワーク・ファミリー・バランスは、家庭的事情のある人だけを支援するので、本人の肩身がどんどん狭くなる。ワーク・ライフ・バランスは、すべての人にライフがあるということで、職場のほうを変えていきます。職場全体の働き方を確認して、そこから課題を抽出し、カエル会議という会議をやってみてください。そこから見直し策を実施します。このサイクルをぐるぐる回して、職場の働き方を変えていくんです。

朝夜メール。
朝、それぞれが自分の仕事の流れを30分おきにブレイクダウンして、どの業務を何時までに終えるかをお互いに見えるように並べます。チーム画面というもので、リーダーが読み上げて共有します。スケジュールをお互い出し合いながら、自分の事情も書き添えるコメント欄があって、ここが一番重要です。コメント欄に自分の家族や自分の事情や体調を書いて、朝一番でシェアします。「僕は今日頭痛がします」というメールを全員に送る人はいないと思いますが、今日一日こういう仕事をしますということを書いて、そこに「少し風邪気味です」と書き添えるのなら、書きやすいでしょう。業務報告の体で、「娘が今、37℃の熱があるのだけれど、保育園に預けてきました」と書いておくと、「あ、この人午後にはお迎えコールが来るな」とみんなわかります。午後になって彼女から連絡が来ない、メールを送っても返事がない状態になっても、サボっているのではなくお迎えコールが来てしまったんだと、全員が了解する、そういう関係性を持つことが大切です。業務以外の、それぞれの背景がわかること、これはテレワークの現場においても非常に重要です。中には朝予定を立てた時点で仕事が終わらない人もいます。孤独に頑張る人がいますが、朝、「終わらない見込みです。助けてほしいです」とヘルプを発信する。そうやって助け合うことができ、あの人サボっているんじゃないかというアンコンシャスバイアスの解消に役立ちます。今こういう状況なのだと具体的な背景が分かり、お互いわかり合える状況に持っていくんです。
夜メールも結構重要で、自分はどうだったかをシェアします。これを見ることで、朝やろうとしていたことと全然違うことをやっていたと気づき、ずれてしまった理由だとか、明日、どうしていくかということも書いていきます。ここでも重要なのは、「今日受注しました!」とか、「やらかしました」という感情の共有です。テレワークが増えてくると、非常に孤独になるが、感情の共有ができることで、「やってしまった!」という仕事のミスも引きずらず、すっきりと眠ることができますし、受注の喜びもまた、みんなで分かち合えます。その人が「これが終わらなかった」「あれが終わらなかった」と書いているときに、どういう自分の知識、スキル不足だったかという振り返りも、みんなが一緒に手伝うことができます。多くの人は残業を人のせいにしたがりますが、8割がたは自分の内的なことに要因がある。そうした自分の知識やスキル不足を振り返ったり、見える状況にしておくことが重要だったりします。これを継続することで、所要時間を正確に見込む力をつけるトレーニングができます。またメインで自分が割かなくてはいけない時間、例えば3割しか時間を割いていなかった、ということを自分で分析できるようになります。
こうやって朝夜メールを書いていくことによって、お互いの仕事が、何を中心にやっている人なのかということがわかり、背景もわかってきて、良いチームになっていきます。

カエル会議。
カエル会議では、付箋に課題を書き出すことを全員でやっていただきます。いきなり書き出すと非常に殺伐とした時間が流れます。最初は、チームの良いところ、メンバーの最近の成長を書き出すことで心理的安全性を高めるところから始めます。いい状態に持って行ってから、チームビジョンの作成を行います。このチームでは本来どういう働き方をしたかったのか、時間があったら挑戦したいことはどんなことなのか、自分の理想を書いていきます。みなさんで理想とする働き方は、こう、ということが決まると、そういう働き方はできているだろうか、検討する。自分はこういう資格を取りたいが、いつ取得するのか、できるのか。今の働き方を週2日は定時で上がって、講座に通いたいので、それができる職場にしたい。といったことをみなさんで共有していきます。その過程で、理想に近づくために、今の職場をどのように改善していけば良いのか、今の職場が酷いから改善するのではなくて、理想に向かっていくために改善するんだというふうに考えていきます。みなさんで付箋に書き出していくときには、無言で、一斉に書き出します。誰かに忖度するから課題が出なかったので、喋らないことに価値があります。付箋をグルーピングして、全員が書き出していた課題から変えます。これを繰り返していくと、みんなが変えたいと思っていたことから変えることができます。
今までよく行われてきた改革では、会社がアンケートを取って、大分析をして、その結果最大公約数的にこのシステムを入れるということが急に上から降ってくるのだけれど、それじゃない感が全職場に漂うことがよくありました。会社が分析してくれるのを待っているのでは自分の職場に合ったものは出てきません。だから、自分の職場でよく話し合うということをやってみるんです。
私たちが有効だと思っているのはオンラインで意見を出し合う仕組みです。カエル会議オンライン。みなさんが一斉に書き出せるシステムをお持ちなら何を使用しても良く、筆跡すらわからないので、非常に活発に意見が出ます。「いいね!」ボタンなどがついているとさらに良い。同時に無記名でアイデアを集めて、忖度なく、「これが、みんなが変えたいことだったのだ」と変えていきます。
労働時間を減らすと業績が落ちるんじゃないかと心配する方が多いですが、業績を下げさせるのではなく「変えたい」とみんなが思っていることが山ほどあるものです。それらを変えていくことで、働き方がどんどんよくなったと実感することができるので、ぜひこの手法でやってみてほしいです。内部調整的な仕事、偉い人のこだわりのための仕事を徹底排除し、長く続いているがメンバーがやめたい仕事を順位高く見直していく。みんなの総意の下、優先順位を高くして変えていくことが重要になります。

カエル会議から出てきた取り組みは100社あれば100通りの解決方法があります。職場ごとに違うものを取り組んでも構いません。全社的に〇〇キャンペーンというやり方では、やらされ感が出てしまうので、各職場の施策は違っていいと思います。朝夜メールとともに実践することで、お互い違うライフスタイルだけれども、それぞれ違う事情を持っていることを理解し合いながら、見直しにも取り組んでいくことが重要になってきます。
具体的な例を取り上げていきます。

スキルマップ。
チームの業務を進めるためにスキルマップを書きます。お名前を右、横軸に書いていって、必要なこと、スキルを縦軸、左に書き出していきます。今、必要なスキルは誰に偏っているのか、記入していく。属人化で困ってしまう仕事はどれかを炙り出すんです。今期、誰が誰に仕事を教えるのかを書いておき、教えてもらった人は仕事に習熟したかどうかをみていく。その人にしかできないことを誰に委譲するのかも計画を立てていく。その計画に従って、ある仕事が得意なAさんに仕事を渡すのではなく、スキルを委譲するCさんと一緒にやってというふうに進めていくことによって、仕事の属人化が解消され、誰かが休んでも仕事が滞ることなく進んでいくようになります。

マニュアル休暇。
これは全員が2週間ずつお休みする日を決めて休暇を取っていくもの。独身の方は平日休暇をとったほうが旅費は安いだろうし、家族がいる人は子どもがお休みの日に休暇を取らないと意味がない。みなさんで分散して重ならないように休みを取ります。2週間休むとなると、流石に業務が滞って困るから誰かに渡すことになります。業務を渡す側がマニュアルを書いても渡される側の人は読んでもよくわからないから、業務を渡される側の人がマニュアルを書きます。それで実際に全員が2週間ずつ休んでいきます。休みが明けて出社したときに「このマニュアルではダメでした」というマニュアルは即座に直していきます。これを全員で1周回すと、属人的な業務が解消します。誰かが休むのをやめてしまうと、後ろの人が休みづらくなるので、休むと決めた日程で、何がなんでも休んでいただきます。有休も消化できるし、計画的に休みを取っていくのがマニュアル休暇です。
こういったやり方で、属人的な仕事のやり方を解消する。スキルマップも含めて、ぜひやってください。

ポイントは、マニュアル休暇、朝夜メール、カエル会議、みんながやめたいと思っているような仕事から見直す、「内部調整的な仕事・誰か偉い人のこだわりのための仕事」を排除、悪気のない無理解=アンコンシャスバイアスを解消する。こういったことができると心理的な安全性を高めるとともに、誰が休んでも回る職場ができます。それは男性の育休だけではなく、そうではないお休み、がんになっても仕事と治療を両立する方もいらっしゃいますし、いろいろな方たちが仕事を続けられるようになります。

さらに、カードゲームとかゲーミフィケーションと呼ばれているものを用いると、アンコンシャスバイアスを解消、ダイバーシティの効果があると言われています。弊社でやってとても好評なのは「ライフスイッチ」カードゲームです。人生を入れ替えるという意味。50代の管理職男性が、自分が引いたカードが30代育児女性のものだったとすると、「ワークの時間です」「ライフの時間です」という設定の中で、30代育児女性のタスクをこなすことになり、「ライフのほうが忙しいじゃないか」となります。30代育児女性の毎日の実情がわかってくると、「なぜ彼女は始業時刻ギリギリに出社するんだ。もっと早く出社して準備しろ」と言っていた方が、「遅刻しないで会社来るだけで大変だよね」ということがわかってきます。悪気なくやっていたことが、実際に自分がそうなってみるとわかってきます。実際にやっていただく時間がないので、90分のカードゲームの中で自分の設定を変えてみて実践していただきます。机上の講座を受けても、ダイバーシティとかアンコンシャスバイアスへの理解が進まないことがわかってきたので、立ち上がって、体を動かしながら、喋りながらゲームをやっていかれるとより良いのではないかと思い作成しました。

以下の12点を挙げ、最後のまとめに入りました。

男性が夜中の授乳を代わり、妻が7時間睡眠を取れる。
朝日を浴びて散歩でき、ホルモンバランスを回復、産後うつから救う。
「産後うつによる児童虐待」から赤ちゃんを救うことができる。
産後うつによる、夫への攻撃が減り、夫婦関係が良好に。
男性の家事育児スキルが上がり、女性が仕事に復帰できる。
管理職に誰が休んでも回る職場を作るマネジメントスキルが向上する。
男性もお迎えを担当し、仕事の生産性と時間への意識が高まる。
女性が復帰後も責任ある仕事を引き受けられるようになる。
夫婦の収入が安定し、経済的理由で理想の子ども数を諦めることがなくなる。
不登校・発達障害など子育て後半の難しい問題も二人で乗り越えられる。
それをみて育つ次世代が、自分が子どもを持つことに希望を持つ。
熟年離婚が減少、生活保護予備軍世帯が減り、定年後のQOL向上。

男性育休推進から始まって、日本中に信頼の好循環を生み出していけるのではないかと思っていると、講演を締めくくりました。

交流タイム

基調講演ののち、小室が進行役となって、サポーターとの交流タイムに入りました。まずは、サポーターのみなさまに自己紹介として、現在取り組んでいらっしゃること、最新状況を2分ずつお話しいただき、行政レクチャーや講演への質問や、参加者同士で尋ねたいことがあれば、チャットに書き込んでいただくようにお願いをしました。

自治体の首長さんのほか、企業関係者はみなさん、人事担当部署でダイバーシティやインクルージョンを通じた働き方改革に取り組んでいらっしゃる方ばかりでした。
企業ではいずれも男性育休取得者が大幅に増えているものの、取得日数に課題がある、労働時間の改善に課題があるなど、共通の課題があることがわかりました。育休取得者が出た職場の全員に応援手当制度を始めた企業もあり、ご参加者同士のやり取りの中で、取得日数の大幅増加に役立っているというお話もお聞きすることができました。

登壇しなかった企画委員からも一言ずつ挨拶をさせていただきました。
地域で子育て支援をしているNPOと地域子育て支援拠点・子育てひろば・子育て支援センターの中間支援を行うNPOの代表を務める奥山千鶴子からは、地域子育て支援拠点、いわゆる子育てひろばの利用者の8割が育児休業中の方であること、お住まいの自治体によって子育て支援サービスに違いがあるので、戸惑っていらっしゃったり、困ったりしている方がいらっしゃるのではないかと気にかけているとお話ししました。

杏林大学客員教授でこども家庭庁参与の清原慶子からは、三鷹市長時代に男性育休取得を奨励する取り組みを行なったことをお話しし、さらに行政マン、航空会社、金融機関など、災害など緊急事態になれば、どうしても現場に寄り添わなくてはならないお仕事の方は、顧客のため、命のため、超過労働を免れないが、そういったことと労働改善とは切り分けて考える必要があるのではないか、何かヒントはあるのかとお尋ねしました。
これに対して、航空会社の方から、企業の使命というところと通常業務体制は切り分けて考える必要があり、目の前のことを見極めて、切り分けてやっていくしかないと思っているとお答えをいただきました。

小児科医としてさまざまな子どもたちに関わってきた榊原洋一からは、子どもの虐待も含めた逆境体験が生涯にわたって悪い影響を与えることがわかってきており、子どもには安定した家庭、安心できる場所が必要であること、一見関係なさそうだが、みなさまが手掛けていらっしゃることは、子育ての親にとって重要であるだけでなく、安定した家庭が子どもの一生にわたって良い影響を与えるという視点もぜひ持っていただきたい、大切なことをやっていただいていると感じたとお話ししました。

交流タイムを終えて、団長の安藤哲也から閉会のご挨拶を申し上げ、交流会は終了しました。

閉会挨拶
にっぽん子ども・子育て応援団団長 安藤哲也

団長の安藤哲也は、NPO法人ファザーリング・ジャパンの代表を務めています。サポーター交流会では、今回の育児・介護休業法改正の3年前ぐらいから、男性育休がメインのテーマで取り組んできました。最初は戸惑っていた男性たちも、育休とったほうがいいぞと取り始めている一方、団体としてもさまざまな企業や自治体に向けてセミナーなどを行なってきて、社内の雰囲気も含めてポジティブになってきたと感じています。
榊原委員も指摘があったように、子どものしあわせにとっても社会的にも、男性の育休取得は大変メリットがあり、そういう意味で男性の働き方を変えることが重要で、日本にとって非常に大きな意味を持つと日頃から思ってきたと言います。男性育休取得も働き方の側面で、これが当たり前になり、言い出しづらいことのないように、職場全体でもそれを受け入れて、回る職場を作っていくことが重要だとも話しました。
今後介護と仕事の両立も大きな問題になってくると指摘、高齢化社会なのでこれは避けられないが、まず男性育休でトレーニングしておくことが重要で、育休を取るとか育児に積極的に関わった男性は、多分親の介護にもスムーズに対応できるようになると期待しています。家族のケアで休むのは別に女性だけの問題ではないということもぜひ、今後ファザーリング・ジャパンでも取り組んでいくと語りました。
最後に、これまでのサポーターのみなさまのご厚情に感謝申し上げ、5月のフォーラムにもぜひご参加くださいと呼びかけ、挨拶を締めくくりました。

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佐野研二郎氏より
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佐野研二郎氏