【報告】にっぽん子育て応援団結成5周年記念フォーラム
2014/06/18
にっぽん子育て応援団は5月24日、結成5周年記念フォーラムを東京・千代田区の大妻女子大学で開きました。
「あれから5年 いよいよキックオフ! 子ども・子育て支援新制度」をテーマに、これまでの5年を振り返るとともに、子ども・子育て支援新制度の施行に向けた準備状況などを各地の代表者から紹介してもらいました。
◎プロローグ
「結成から5年 にっぽん子育て応援団のこれまで そしてこれから」
堀田力団長、樋口恵子団長をコーディネーターに厚生労働省事務次官の村木厚子さん、団長の勝間和代さん、企画委員の岩田喜美枝さん、奥山千鶴子さん、椋野美智子さん、柳澤正人さん、山田正人さんが思い出や裏話を披露しました。
結成時を振り返った樋口団長は、「消費税が引き上がりそうだというチャンスをよくつかまえてスタートできた」と懐かしみ、堀田団長は、子ども関係の予算は少なく、応援団もいないことから、子どものためにお金を取ってこようと共同謀議したと付け加えました。
当時(5年前)、雇用均等・児童家庭局長であった村木さんも、「子どものための財源があるかもしれない」と千載一隅のチャンスをうかがっていたと振り返りました。その後、子ども・子育て支援新制度の設計を担当する内閣府の政策統括官に就任。「政権交代を2回もくぐりぬけてできた」新制度の論議の最中に東日本大震災に直面し、震災対策を先にするか、税・社会保障制度改革論議を続けるかが議論になったことを取り上げ、「東日本大震災は目に見え、音にも聞こえる危機。しかし、この国に忍び寄っている少子化はずっと前から、もっと大きなマグニチュードでこの国を襲っているのに、みんなで取り組みができていない」などの意見が出て、社会保障制度改革論議が再始動したことを紹介しました。
さらに、新制度については、来年4月から施行されるものの、「まだ消費税は10%になっていない」と危機感をアピール。「私たちの請求書は1兆円超だった。残り3000億円はこれから(確保することになります)。また、消費税財源が市町村でちゃんと子どものために使われるか、子ども・子育て会議に押しかけ、みんなでチェックしないといけない」と訴えました。
続いて、勝間団長が発言。保育所入所や学童保育で苦労した経験から、「これからの人が子どもを持つときにお金の心配のない育児環境を整える一助になればとやっている」と話しました。
労働省で村木さんの先輩でもあった岩田委員は、応援団発足時、資生堂役員だった経歴を生かし企業への浸透に力を入れたことを披露。これからは、長時間労働が当たり前といった人々の行動の考え方や行動を変えるという仕事があることを訴えました。
奥山さんは、大御所の団長や企画委員と事務局との橋渡し役を担ってきたと紹介。地域で子どもたちに関わることで、その子が将来、地域で親になることを支援することにつながると訴えました。
山田さんは、9年前に育児休業を取得し、本を書き講演する中で団長らとつながりができて応援団に参画することになった旨を紹介。応援団をきっかけに企画委員だった林文子さんに誘われ横浜市副市長となり、待機児童対策に奔走することになったことを振り返りました。
8年前まで厚生労働省に在籍したという椋野さんは、介護保険を誕生させた市民ネットワークが子ども関係でも必要だと考えていたことを紹介。地方から社会保障政策を見てきたことから、人口減少が進み地域再生が課題と言っているところほど子育て世帯への支援が最優先課題であり、まだ応援団にはやるべきことがあると訴えました。
小児科医の柳澤さんは、子どもの貧困や、子どもの保健分野で格差が広がっている現状を課題に挙げました。
◎オープニング
「いよいよキックオフ! 子ども・子育て支援新制度」
平成27年4月から新制度が施行の予定。それに先行して、消費税が8%に引き上げられた財源の一部を活用して「保育緊急確保事業】がスタートしています。そこで、にっぽん子育て応援団事務局は、平成26年度の自治体予算を調査してみました。県庁所在地など69自治体から得られた回答からは、保育所の拡充だけではなく地域子育て支援事業などにも力を入れていること、待機児童加速化プランに対応した事業としては、保育施設の整備とともに担い手確保のための事業が多くなっていることが分かりました。
勝手に表彰「すてきな子育て支援大賞」
自治体予算調査などを通して、独自の子育て支援事業を展開している自治体が少なくないことが分かりました。そこで、遠野市の「ねっとゆりかご」など先進的な事業を実施している19市区を「すてきな子育て支援大賞」として表彰いたしました。
◎パネルディスカッション
「みんなで作る地域子育て支援」
企画委員の岩田さん、団長の勝間さんをコーディネーターに、新宿区長の中山弘子さん、北本市長(埼玉県)の石津賢治さん、相模原市子ども・子育て会議会長の岡健さん(大妻女子大学教授)、墨田区子ども・子育て会議公募委員の荘司美幸さん、内閣府・少子化対策担当参事官の長田浩志さんが、地方版子ども・子育て会議の進捗状況などについて報告しました。
このうち、中山さんは「子育てしやすいと思う人を増やす」と目標を掲げて子ども施策を充実させ、平成15年度(次世代育成支援行動計画の前期計画時)から就学前児童の保護者で倍増、小学生保護者で3倍増となったことを紹介。現在は、保育施設の受入れ枠を増やすとともに、在宅で子育てしている人の育児の辛さを和らげるよう一時保育を整備するほか、身近な場所できめ細やかな相談のできる体制づくりを進めていることを報告しました。利用率が高い地域でも待機児童が発生するなど、保育所整備の難しさにも言及されました。
就任11年の石津さんは、小学6年生まで学童保育を受け入れたり、低学年の少人数学級を実施するほか、待機児童の3年間ゼロ、ゼロ歳児のおむつ無償化、病児保育の計画化など子育て支援に最優先で取り組んできたことを報告。待機児童の多い都市部でなく、子育て環境の整備された北本市への移住をアピールしました。
岡さんは、次世代育成支援行動計画の時から、行政が作成する計画に市民が参画する協議会の意見を反映させるよう提言書をまとめ、その結果をチェックするなど、当事者参画の実質を求めてきたことを紹介。今回の新制度においても、幼保連携型認定こども園の認可基準を巡って市民を対象とした学習会を開催して学び合っていることを報告しました。
荘司さんは、親会議のほかに企画会議や臨時会議などを開催し、グループワークを通して墨田区の子ども・子育ての良い点・悪い点を出し合い、委員の間で理念を共有する時間を持てたことが大事だったと報告。地域の子育て世代に近い立場で一緒に制度を考える場づくりを行ってきたことを紹介しました。
長田さんは、8%に引き上げられた消費税引き上げ分の一部を活用して、新制度の先取りとなる保育緊急確保事業が実施されていることを紹介。待機児童対策だけではなく、地域子育て支援拠点事業など地域子ども・子育て支援事業に移行する事業も盛り込まれていることを挙げ、新たな事業として利用者支援事業への期待を示すとともに、新制度をまつことなく事業化できる点を強調しました。
その後、コーディネーターとのやり取りとなり、「働き方や社会の在り方が問われている」「若人たちが政治に参画し、声を寄せるべき」「民主主義には時間がかかる」「それまで供給側にとどまっていた関係者が利用者・当事者に広がっている。受益者の論議も入れて事業計画を策定することが大きなポイントではないか」「当事者の声を吸い上げる人を増やすことが大事。それよって行政の風通しがよくなるとよい」「わが町のことをちゃんとチェックし、みんなに知らせるという足元のことも大事にしたい」「かかわっている人が当事者意識を持って変えないと課題は永久に残る」などの意見が出されました。
最後に、思い切った財源投入と働き方の抜本的な見直しなどを求めるアピールを採択して終わりました。
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