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にっぽん子育て応援団結成7周年フォーラム開催報告

にっぽん子育て応援団結成7周年フォーラム開催報告

2016/06/21

にっぽん子育て応援団結成7周年記念フォーラム
これから親になる私たちが考える本当に欲しい子育て支援はこれだ!
──開催報告


 にっぽん子育て応援団は5月22日、東京家政大学で結成7周年記念フォーラム「これから親になる私たちが考える本当に欲しい子育て支援はこれだ!」を開催しました。

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 冒頭、応援団の団長の1人で東京家政大学女性未来研究所長でもある樋口恵子さんが挨拶。結成当時は、子ども・子育て支援のための法律はありませんでしたが、その後、子ども・子育て支援法が誕生し、女性活躍推進法が成立したことなどを振り返りました。また、友人から、「2000年の介護保険誕生のときは、目が覚めるほどの変化があったが、子ども・子育てではそこまでの変化はない」と言われたことを紹介しながら、「目が覚めるような変化ではないが、気付くと変わっている」と指摘。保育園が新設されたり、ベビーカーが嫌がられなくなったり、幼子を一人で連れている若い父親に対する周囲の反応が変化していることを挙げました。「法律ができると意識が変わる。意識が変わると行動が変わる」と言及し、18歳が選挙権を持つようになったことにも触れながら、「これから大人になる人の意見がしっかり反映される社会にならないと子育てしやすい社会にならない」と期待を寄せました。

【第1部】「子ども・子育て 今こんなことが起きている!」
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 「子ども・子育て 今こんなことが起きている!」と題して、大学生や子育て当事者からの現状報告を行いました。ファシリテーターは、米田佐知子さん(子どもの未来サポートオフィス代表)。米田さんは、自身が2001年、横浜市の子育て中の母親の声を集めて政策提言した経験を踏まえ、声を出し出発点になることが大事だと述べました。そして、フォーラムを機に実施したアンケートの結果を紹介。若者世代は現実感がないために多くの声が寄せられなかったものの、現役世代からは地域で障害のあるわが子へのサポート体制を整えたが夫の転勤で引っ越すことになるかもしれない不安や、一人っ子への風当たりの強さ、産前産後ケアの弱さ、自営業での保育所への入りにくさ、生活が厳しいのに保育所に入れない不満などが寄せられたことを報告しました。
 当事者のトップバッターとして、幼稚園教員を目指しているという牧野歩美さん(東京家政大学家政学部児童学科3年生)が、結婚や出産はまだ考えられない遠い話と報告。結婚や出産に結構なお金がかかることに不安が大きく、20歳代のうちに結婚、出産したいと計画しているが、幼稚園教員の給与で生活し、貯金ができるのか気がかりなことを明かしました。母親が小学生4年頃まで専業主婦だったことから、自分も子どもが幼いうちは育てたいとの希望を持っているが、周囲に小さい子どもいない中で子育てに不安があることも挙げました。
 続いて岩崎ひかり(東京家政大学家政学部児童学科3年生)さんが発表しました。母親は結婚を機に専業主婦となった保育士。3歳未満の子どもと接するうち、自身も保育士を目指すようになったと報告しました。ただ、保育士の給与は他の産業より低いといわれていることから、東京で一人暮らしができるのか不安。将来は結婚して3人程度は子どもがほしいが、給料から将来のために貯金するのは難しいのではないかと感じていることを明らかにしました。また、保育園でアルバイトしてみて、2~3時間でも子どもと本気で接すると大変だと感じたことから、家庭で子育てしている母親も体力的には大変ではないかと推察。結婚後は保育士をいったん辞め、子どもが中学生程度になれば働きたいと考えているものの、相談できる人が周囲にいない中ではイライラしてしまうのではないかと不安を感じていることも明らかにしました。
 ここで、米田さんが、仕事を一旦やめるとの考えについて質問。岩崎さんは、大学の友達の間でも、ずっと働き続けるより、ある程度働いてから一度辞めて家庭に入り、復帰すると考える人が多いことを紹介しました。
 次にNPO法人で保育士として働く28歳の橋口一委さんが、保育士としての働きぶりについて報告しました。通信教育で免許を取得した橋口さんは、この2月に資格を取得したところ。就職のために保育園を見学していたら、保育実習を経験していないと伝えたにもかかわらず、すぐにでも就職してもらいたいと言われ、即面接で担当クラスまで決められたことを紹介しました。資格があればだれでもよい、新人保育士を育てる余裕もないという印象を受け、このような保育園に預けざるを得ない親御さんがかわいそうに思ったと述べました。その上で、子ども一人ひとりに向き合って保育をしたいと資格を取得したことから、今のNPOを選んだことを報告しました。

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 続いて、大田区にある子育て支援の場「ほっとスペース じいちゃんち」の副代表を務め、子育てと介護のダブルケアを経験している岡本知子さんが、3人の子どもを抱えながら介護した経験について述べました。2010年に結婚した当初から、義父母と同居。田舎で祖父母らと暮らした経験もあり、介護を担う覚悟を持っていたが、想像以上に過酷な介護体験であったことを吐露しました。東日本大震災の3日後に舅が亡くなり、姑は元気がなくなり、里帰り出産をしている間に、姑が転倒を繰り返すまでに。姑の面倒をみていると、わが子がかまってもらえないとかんしゃくを起こすようになったエピソードを紹介しました。
 こうしたストレスを発散する場を探したほうが良いとケアマネジャーからアドバイスを受けたものの、児童館のひろばでは核家族家庭ばかりで話が合わず、介護を理由に週2日の定期利用保育を使えるようになったことで一息つけたと振り返りました。ただ、翌年には利用できないなど綱渡り。ようやく小規模保育に入園できることとなり、子どもと向き合う時間を持つことができた。一方、介護者の会に行っても、集まる人は年上の40~70歳代で、ダブルケアの辛さを理解してもらえないと明かし、周囲の手助けがない日本は冷たい社会だと感じたと述べました。
 岡本さんは、「ほっとスペース じいちゃんち」を子どもが2か月のころから利用。ただ、担当のケアマネージャーはこのような場を知らなかったと指摘し、「情報弱者が追いつめられる」と言及しました。
 最後に20歳代の結婚適齢期の男性として辻翔太さんが登場。子ども好きで結婚願望が強いながらも、自分たちの今後について厳しい現実があると分析し、子どもがいない現状で何ができるのかと考えていることを打ち明けました。現状の問題点として、理系の大学で古い体質に苦しむ女性研究者の姿について紹介。時間制限のない男性研究者が夜中まで研究する一方で、結婚・子育て中の女性研究者はそれだけの時間を費やすことができないため差が生じ、女性研究者が活躍できにくいと訴えました。こうした問題意識から、会社で、ワーク・ライフ・バランスの重要性について労務担当に説明するものの、なかなか聞いてもらえない現状であることを吐露。子ども・子育てに注目が集まる中、個人レベルで何ができるか探りたいと発言しました。

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 これから親になる若者世代の発言を受けて米田さんは、出産・育児がブラックボックスになって、若い人が関心を持ちにくい現状にあるのではないかと分析。出産後は仕事を辞めて、子育てが一段落したら復職したいとの希望が強いと総括しました。若者世代の意見を踏まえてフロアでは気づきを話し合ってもらいました。

【第2部】「子ども・子育て・ライフプラン緊急対策会議」

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 現状報告を受け、「子ども・子育て・ライフプラン緊急対策会議」と称して、ヘルスケア・プロバイダーや産前産後ケア担当者、社会企業家、国の子育て支援担当者などが対策を協議しました。
 まず、医療専門職であり、東京家政大学子ども学部長の岩田力さんが、子ども学部、子ども支援学科について説明。50年以上にわたり保育者を養成してきた同大学が、現在のこども分野で不十分な健康保育や特別支援教育に焦点を置いて人材養成を行おうとしていることを紹介しました。
 次に、大学生が共働き家庭に訪問して仕事と子育てを学ぶ「ワーク・ライフ・インターン」をあっせんしているスリール株式会社代表取締役の堀江敦子さんは、起業した動機について説明しました。中学生の時からベビーシッターをするなど子どもを保育することに抵抗がなかった堀江さん。就職後、ワーキングマザーでも長時間労働せざるを得ない職場に疑問を持つものの、社内で当事者として改善に乗り出す同志が得られなかったことを振り返りました。当事者意識が持てるよう若い人をいか巻き込むかを考えた結果、自分と同じ経験をすればよいのではないかと起業したことを紹介。インターンシップを経験した学生は、仕事だけではなく生活についても考えるようになり、これからの社会をどうするかという視野が広がっていることをメリットに挙げました。
 続いて妊娠期から育児期まで切れ目なく支える子育て世代包括ケアの実践、和光市版ネウボラで注目を浴びている和光市南子育て世代包括支援センターの榊原久美子さんが取り組みを紹介しました。まず、子育ては楽しいが辛いという現状は自身がだった20数年前から変わっていないと指摘。子どもを安心して産める社会であるか、子育てしやすい社会であるか、子どもの権利が守られる社会になっているかが課題ではないかと問題提起し、対処療法的な施策に終始するのではなく、母親と子どもの関係性の発達支援が重要だと訴えました。
 人口8万人の和光市では、毎年、1000冊の母子手帳を交付。窓口の対応は母子保健ケアマネージャーですが、高齢者も含めて支援している現状を紹介しました。ケアマネは、母親を地域で孤立させないよう、手帳を交付するときに様々な地域サービスについて情報提供し、悩むことはないと言葉かけしていると紹介しました。また、地域子育て支援拠点では少し先輩のローモデルを示すほか、両親学級ではリアルうんちによるおむつ替え体験など実践的なメニューを用意していることを紹介。子育てに負担感を感じる母親が多いだけに、一時預かりが重要であることを訴えました。
 次に、「生みどきが、働きどきというパラドックスをどう乗り切る?」という観点から、和光版ネウボラ誕生にも関わってきた東邦大学看護学部教授の福島富士子さんが発表。先進国のうち母親にやさしい国ランキングで日本は32位、労働参加率では65位以下というデータを挙げて問題視し、「日本が母親にやさしい国になるためには、ワーク・ライフ・バランスや妊娠期からの切れ目ない支援が重要だ」と訴えました。また、6歳未満児のいる家庭での夫の家事・育児負担時間の国際比較データも紹介し、海外は家事支援で男性が支えているのに対して日本では家事時間が極端に少ないことにも言及しました。さらに、「女性の卵子の数は生まれ出た瞬間から減ることは伝わっていない」と指摘し、35歳で不妊治療しても出産にたどりつくのは16%程度であるとのデータを紹介して、子どもを産むには時期があることを伝えるべきだと訴えました。出産適齢期と働く時期が重なるだけに、社内体制などを考慮し遠慮することなく「産んだもん勝ち」だと指摘。ネウボラの活動を通じて肝っ玉母さんをつくりたいと述べました。
 最後に内閣府子ども・子育て本部参事官の竹林経治さんが、子ども・子育て支援事業について説明。待機児童対策ではなく、総合的な子育て支援の仕組みとしてスタートしていること、0~2歳の在宅子育て世帯への支援を強化していること、市町村の子ども・子育て支援事業計画の作成にあたっては、現場の事業者や当事者の意見を組み込んでいることなどを紹介しました。
 コーディネーターを務めたNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事でにっぽん子育て応援団団長の安藤哲也さんは、子育て世代の意識改革の重要性を指摘。自身も3人を子育てしている時期に仕事と子育ての両立が難しくなり、自分の生き方を変えようとファザーリング・ジャパンを設立したことなどを紹介しました。その上で、従来の子育てでは、父親にとって我が家はホームでなくアウェイではないかと言及。父親が育児にかかわることで、母親の育児ストレスが軽減され、家計収入も増えるといったメリットがあることを挙げました。ただ、個人の努力には限界があるだけに、「イクボス」と称して、企業の管理職の意識を変える活動をしていることにも触れました。
 現代の若者の状況に関して、堀江さんは、大学生の6割が専業主婦志向である点について、「社会が変わっているのに意識が変わっていないのではないか」と問題視、リアルな状況に接する機会が少なく自分の頭だけで考える傾向が強いことから、インターンを経験して自分の育った家庭以外を知ることが大事と述べました。安藤さんも、「専業主婦志向は男性がイクメンになるチャンスを減らす」とも付け加えました。
 また、榊原さんは、和光市では子育て支援分野と高齢者分野それぞれにケアマネージャーを配置していることを紹介。家族全員がウィンウィンの関係をもてるように考えていると述べました。その上で、今後は地域包括ケアシステムが必要ではないかと訴えました。

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 子育てしやすい社会とするための様々な取り組みについての報告をどう受け止めたか、若者世代が再び登場して発表。牧野さんは「働きたいし、子どももほしい。なんでもやったもん勝ちということであれば、助けてといえる自分になることがまずは第一歩ではないか」と述べました。また、岩崎さんは、女性の経済力も重要という点に気づいたと発言。橋本さんからは、社会から若い世代に対する具体的な提案がほしいと注文が出ました。岡本さんは、「子どもの将来を考えたら悲観するが、当事者が言わないと何に困っているか分からない」と声をあげる必要性を訴えました。辻さんは、育休をとるために今からしっかりと仕事のコントロールをしたいと話しました。
 若者らの感想を受けて安藤さんは、子育てをしてみて気づくことが多いことに言及。「見えない価値観の壁がある。多様な人の言葉に耳を傾けることが大事だ」と指摘し、当事者の声を政党や政府に届けていく旨を訴えました。

 2016年6月に施行された改正公職選挙法により、選挙権が18歳以上に引き下げられました。より若い人たちに、ぜひ一票を投じてもらいたいと考え、暮らしと国政とのつながりを実感することから、興味や関心が深まるのではないかと企画した今回のフォーラム。不安そうに語る若い人たちの表情の変化から、参加した100名のみなさんからは、大変興味深く、参考になったとの声が寄せられました。

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